事業用建物を建てるだけが土地活用ではない

平成27年の相続税の増税以来、大手ハウスメーカーや金融機関が地主さんをターゲットに「土地の有効利用と相続税軽減を目的としてのアパート建築」を強く勧めています。確かに、アパート建築によって相続税が安くなるのは間違いありません。仮に地主さんが、評価額1億円の土地(A)に1億円を投じて全額を借り入れしてアパートを建てる、という事例で計算してみましょう。

  建築前 建築後  
土地(A) 1億円 8200万円 貸家建付地の評価減
土地(その他) 2億円 2億円
アパート 0 3000万円 1億円の建物の概算評価額
預貯金 5000万円 5000万円
その他財産 5000万円 5000万円  
合計 4億円 4億1200万円  
借入金 0 △1億円 当初借入額
差引純資産 4億円 3億1200万円  

上記は概算ですが、土地(A)は貸家建付地の評価減で評価額が8200万円に下がり、建物の評価額は建築価額の30%の3000万円程度になります。計算では8,800万円の評価減となります。

しかし一方で、「空室が出たら、家賃が下がったら、金利が上がったら・・・」さらに「借金を残された子供たちは大丈夫だろうか・・・?」という不安も残るでしょう。サブリース契約でも安心できません。全国で空室が20%以上もあると言われている時代ですから、ほとんどの地主大家さんが持つ大きな心配事です。そのせいか、最近では「高齢者住宅やデイサービス型など」の特殊な建築計画の提案が増えてきました。

一方で、所有している土地に事業用の建物を建てるのではなく、土地を売ったお金で価値の高いものを購入する、という活用方法もあります。例えば土地(A)を売却して、その資金で人気の高い地域の、大きく価値の下がらない区分所有(分譲)マンションを、仮に3戸を購入するという想定で計算してみました。

土地(A) 売却 売却
土地(その他) 2億円 2億円
区分所有① 0 800万円
区分所有② 0 800万円
区分所有③ 0 800万円
預貯金 5000万円 5000万円
売却代金(手取) 1億円 1000万円
その他財産 5000万円 5000万円
合計 4億円 3億3400万円
借入金 0 0
差引純資産 4億円 3億3400万円

区分所有マンションの土地の評価額は「小規模宅地等の評価の特例:200㎡迄50%減額」によって更に安くできる可能性があり、相続税を下げる効果は小さくありません。なにより、借金をしないのですから空室が出ても家賃が下がっても、また金利が上がっても資金繰りの心配はありません。また相続財産の分配の際も、アパート建築では建物と敷地は分割できませんが、区分所有マンションであれば上手に分けることもできますし、場合によっては売却することも容易です。このような、土地を売ったお金で価値の高いものを購入するのも、また「土地の有効活用」のひとつです。もちろん、購入後に大きく値が下がるような物件を選んではダメですが・・・。先祖から受け継いだ土地を「どうしても残したい」という場合は別ですが、所有している土地に事業用の建物を建てるだけが唯一の土地の有効活用ではありません。売却して他の資産に組み替えるのも交換するのも土地活用です。(税理士/谷口賢吉)