¥重加算税の対象となるケース

長い税理士稼業で相続税の申告を扱っていると、税務署の調査に立ち会うことも多くあります。今回はその中で「申告漏れと判断されて重加算税の対象」となった苦い経験を披露いたします。読者の大家様も、ぜひ参考にして頂きたいと思います。

図のような家族で、ご主人が亡くなられて相続が発生しました。法定相続人は奥様を含めて6人です。

亡くなられた甲さんは農業を営む傍らでアパート経営をされていました。妻Aと長男Bと長男の嫁である養女Fと4人で暮らしていました。3人の娘さんは嫁いだり、独立したりで別世帯でした。このようなケースでは、通帳の管理は妻のAさんが一人で抱えていることが多いのですが、今回も同様の状態でした。私(税理士)は、銀行や農協の古い通帳も全てチェックして、残高証明書の額を基にもれなく荘ザク勢の申告をしたつもりでおりました。

ある日、税理士の私宛に税務調査の通知があったので、妻Aと長男Bと3人で調査の前の簡単な打ち合わせをしました。懸念される事柄も無いものと思い調査の立会に臨みました。ところが・・・・まず調査担当者は亡くなった甲さんの経歴等を質問します。そのあとで「これより申告内容の調査をいたしますが、もし、申告漏れがあるようでしたら、前もってご呈示下さい」とAさん達に尋ねました。まるで(今からでも遅くないので正直に出してください)と言っているように聞こえます。AさんもBさんも「ありません」と即座に答えています。すると調査官は「郵便局との取引は無かったでしょうか?」尋ねてました。私は郵便局との取引きについては聞いていませんでしたので2人の答えに注目していると、長男Bさんが「ありません」とキッパリと否定しました。後でわかることですが、ここで後戻りできない一線を越えてしまったのです。調査官は「おかしいですね。郵便局の定期貯金や簡易保険契約があったことを確認しているのですが」といって鞄から資料を取り出しました。AさんとBさんの顔色が変わったように見えました。この後申告漏れを認めて「ご用!」という事態になりました。

あとになって、なぜ郵便局の定期貯金等を申告から除外して、税理士の私に報告しなかったのかと尋ねたら、長男Bは「郵便局の人に「絶対バレないから大丈夫ですよ」と言われた」と釈明をしていました。たしかに30年近く前は、大蔵省(税務署)と郵政省(郵便局)との縦割りの弊害から、郵便局への調査が出来なかった時代がありましたが、現在はゆうちょ銀行への調査もシッカリと及ぶのです。

結果として、定期預金証明書の資料や簡保生命保険契約の資料を基に、大きな申告漏れを指摘されました。さらに、最初の答弁で郵便局との取引はないと言ったことが、故意に隠していたと判断されて「重加算税」の対象となってしまいました。ちなみに、長女Cさん、次女Dさん。三女Eさんやその家族の方たち名義の預貯金や保険契約で、亡くなった甲さんのお金から作られた、すべての郵便局関連の貯金も申告漏れの扱いとなりました。また、重加算税対象は特典を認めない扱いとなります。本来はAさんには「配偶者の税額控除」が適用されるのですが、修正した額については認められないという厳しい結果となりました。申告する前に私に話してもらっていれば、申告額が少し増えたとしても、重加算税は回避できて、配偶者の特典(税額控除)も生かせたのに・・・と、残念な思いでした。(税理士/谷口賢吉)