設備故障時の減額割合とは?

2020年4月に施工される新しい民法で賃貸経営に関係する重要な改正があります。それは「設備故障時の賃料減額責任の明示について」です。この条項についてレポートします。

もし、エアコンや給湯器などの設備が故障して使用できなくなった場合、急いで修繕するのは貸主として当然の行為ですが、賃料を減額する義務は今までは明示されていませんでした。修繕が遅れたり揉めてしまったときに、入居者さんによって「賃料を下げて欲しい」という要望を言われるくらいでした。しかし民法改正では、入居者から賃料の減額を請求されなくても「当然に賃料が減額される」という内容になります。では「その金額」はいくらなのか?というと、そこまで規定が定められていないので、施工までに賃貸契約書の中に規定を盛り込む必要があるのです。国土交通省では、その考え方としては次のように解説しています。

一部滅失の程度や減額割合については、判例等の蓄積による明確な基準がないことから、紛争防止の観点からも、一部滅失があった場合は、借主が貸主に通知し、賃料について協議し、適正な減額割合や減額機関、減額方法(賃料設定は変えずに一定の期間一部免除とするのか、賃料設定そのものの変更とするのか)等を合意の上決定することが望ましいと考えられる。

実は、公益社団法人日本賃貸住宅管理協会の「ス部リース住宅原賃貸借契約書(改訂版)」に、こういった場合の金額についての記載があります。そこには設備故障の状況別に、賃料減額割合と免責日数が規定されています。下記の表を参照してください。

状況 減額割合(月額) 免責日数
トイレが使えない 30% 1日
風呂が使えない 10% 3日
水が出ない 30% 2日
エアコンが作動しない 5,000円 3日
電気が使えない 30% 2日
テレビ等が使えない 10% 3日
ガスが使えない 10% 3日
雨漏りによる利用制限 5~50% 7日

計算例を見てみると、

「家賃10万円の物件でトイレが3日間使えなかった場合」

家賃10万円×減額割合30%×日割3/30-免責日数1日=2,000円

このケースでは賃料から2,000円の減額が目安となります。

トイレが3日間使えなった時に「2,000円の減額で納得してくれるのか」はともかくとして減額規定のモデルとして大いに参考になります。

さて、この改正は一見すると大家さんにとって悪い事ばかりに思えますが、考え方によっては良い部分もあるのではないでしょうか。

交渉の時の基準となる!?

設備故障トラブルの現場では過去にも、エアコンが壊れて眠れないためホテル代を出してほしい、子供が汗疹になったので治療費を請求したい、などと主張する入居者さんがいらっしゃいました。給湯器が壊れた場合でも、設備の修繕や交換工事に立ち会うために会社を休んだので「休業補償を請求したい」等と言われた事もあります。修繕されるまで家賃は払わないと!等と、堂々と滞納する人すらいます。それというのも、設備故障の時にかかった迷惑を「お金に換算するといくら?」というガイドラインが無いからで、このままではこうした揉め事は益々増えていくだろうと思われます。それが今回の民法改正を機に、賃貸借契約を交わすとき、「設備故障の際の賃料減額」を明示して署名を交わすことになれば、少なくとも「迷惑度合いをお金に換算する」ことに合意することになります。大家さんにとっても悪い話ばかりではないのではないでしょうか。実際に改正民法が施工される2020年まで様々な議論がされ、契約書にどう反映していけばいいかが明確になるはずです。関心をもってこのニュースを見守って頂きたいと思います。