今まで3回ほど、このブログで「賃貸住宅の騒音トラブル」について書かせて頂きましたが、今回はその中でも一番対応の難しい問題を取り上げます。それは、「通常で使用している(つもりな)のに、その音にクレームを言う入居者がいる」というケースです。これを私は「通常使用系騒音」と呼んで区別しています。

過去のレポートでは、騒音問題を5つに分類して紹介いたしました。

  1. 飲み会等の騒音による問題
  2. 設備等が起こす騒音問題
  3. 入居者の配慮が足りなく起こる騒音
  4. 通常に使用しているのに騒音の苦情がくる問題
  5. 苦情元にメンタルな問題がある

この中で、1~3までは入居者さんの行為に問題があるか、居室の設備に問題がある騒音でした。この場合は「注意をする」「修理する」「認識させる」と言う手段が解決方法であり、それなりのテクニックは必要なものの、ある意味解決しやすい騒音問題と言えます。賃貸の現場で起こる騒音トラブルのほとんどは、1~3の段階で対応が可能なのですが、今回の「通常使用系騒音」は、いつもの対応をしているにも関わらず、苦情元からは、「配慮して生活している」と言われて、大家さんと管理会社が間に挟まれてしまう困ったトラブルです。

最終的には裁判所に判断してもらえば一番ハッキリしますが、平成24年3月15日付東京地裁での「分譲マンション上下階騒音訴訟」の判決を読むと、音の測定費用だけでも64万円掛かっていたりしますので、賃貸物件で音の差止請求や慰謝料を求めて訴訟を起こすのは現実的な解決策ではありません。

ではどう対応するのか?ということですが、長年、賃貸管理の現場で培った私の解決方法として、ます大切なのは「苦情元と騒音元へのアピール」を意識する事です。これは初動の「文書配布」から始まって、「訪問」「改善依頼」「打合せ」などで、何度か当事者と顔を合わせる機会がありますので、双方に「一生懸命に対応している」ことを印象付けるのです。子供のお遣いのように、行ったり来たりして意見を聞き取っているようにみえても、後になってみれば「アピールをする」と言う重要な意味のある行為となります。

そして「騒音元の故意過失」があれば改善を求めます。「苦情元の過剰反応」があれば、その旨を指摘します。もし、「騒音元が悪く無い」と判断した場合は苦情元に対して、「配慮して生活しているのに音が聞こえるのは『建物の限界』です」と言い切ります。そこから先は、お互いが我慢できるか、それとも引っ越しするのかの問題になります。何が何でも引っ越しさせないとか、我慢して住み続けてもらうという事は残念ながら期待できません。お互いの生活音に特に問題がないのに「うるさい」と感じさせてしまうのは「建物の限界」だからです。

大家さんや管理会社の姿勢としては、結果的に「建物の限界」と伝える場合でも、当事者間で感情的にならないように調整をして「対応を積み重ねる」ということが誠意であると私は考えます。「共同住宅なのだからお互い様です」と言う、一昔前の不動産会社が最初の段階で使っていた言葉は、「しっかりと対応を重ねた末に入居者さんに悟ってもらうフレーズ」だと思っています。今回の通常使用系騒音の対応は、完全に過失のある「飲み会で騒いだ」や「音が響いていないと思って運動していた」等の対応を完全に通り越した場合の対応です。多く発生することはありませんが、逃げずに対応することが大事だと思って現場に臨んでいます。